公開セミナー「東日本大震災と自治体ICT」の資料に学ぶ

昨年11/24に開催された公開セミナー「東日本大震災と自治体ICT」の資料が、
以下のURLに公開されています。
http://www.city.sendai.jp/shisei/1201134_1984.html
一通り読ませて頂き、ICTに関わる業種の人間は、絶対に読むべき資料と感じました。
ネットワークやシステムの供給側の立場から、特に参考になった点を以下に記します。
1. ほぼ全担当者が「データの分散は実施しておくべき」という認識を持っている
分散の規模に違いさえあれど、(市外~県外~国内~海外)
「必要性を感じた」という点は、ほぼ全自治体担当者が同一の意見でした。
「預かった個人情報を分散して他の自治体におくことに対するコンセンサス」(石巻市/佐藤氏)
については、今であれば多くの人から支持が得られそうな気がします。
どこにいても地震の脅威から逃れられない日本において、
自治体であろうとも、民間企業であろうとも、個人であろうとも、
今後はクラウドの活用が必須であると、改めて認識させられました。
2. 復旧する・しないの選択、復旧する場合の優先付けが必要
「使えて当たり前と思っているものが、突然全部使えなくなった場合にどうすれば良いのか、
 あらかじめ検討する必要があると思う。」(陸前高田市/高橋氏)
の言葉にあるように、”全部”使えなくなる事態は想定していないのが殆どと思います。
そんな中、現場では以下のような判断をされていたことが分かります。
・サーバは、AD(ドメコン)サーバとファイルサーバを優先して復旧させる(山田町/船越氏)
 ※ADを優先するのは、アカウント管理が出来ないと、どのサーバにもアクセス出来ないため
・PC、プリンタは(余震などで)落下してもやむなし(石巻市/佐藤氏)
その他、「パソコンをかき集めても、Windows Home Editionだと役に立たない」など、
その場になってみないと分からないであろう事案も多数あり、非常に参考になります。
“全部”使えない事態を想定し、予め準備しておくことが必要と感じました。
3. 暫定復旧後の本復旧手順も考慮しておく必要がある
これは、陸前高田市を支援した名古屋市/綱島氏の資料がとても参考になります。
・マイクロソフトと ライセンスの一時使用 許諾の調整
・首都圏における高速・大容量通信回線の確保(データセンターとのやり取りなど)
結局、クラウドでデータは避難しておくことが出来ても、
利用するためには通信回線の復旧が必要であり、
本復旧における回線調達方法などは、考慮しておく必要がありそうです。
※資料中ではFWAでの復旧が記載されていましたが、首都圏では確実に容量不足でしょうから…
4. 無線LANを普及させておく or 無線LANでの暫定構成を立ち上げられる体制を整えておく
物理的なLANケーブルを引かずとも済む無線LANは、各自治体で活躍していました。
(陸前高田市は、名古屋市に本社があるバッファロー社の協力も得られたようです)
今まで無線LANというと利便性のためだけで、
セキュリティ面で懸念→導入見送りとされるケースが多かったのですが、
「非常時の無線LAN有効性」(多賀城市/田畑氏) について、今後は考える必要がありそうです。
その他、自治体ならではと感じた言葉に、
「市民が第一、職員は二の次 ではあるが、職員あっての災害対応」
「行政機能が失われる → 災害復旧が出来なくなる」
という点。現場の混乱の中では、本当に難しい天秤だったのだろうと感じました。
最後に。
「同じ建物の下の階の人は流された」など、文にしてしまえば短い言葉ですが、
その時の辛い情景や想いを思い出しながらも、
今後のために資料にまとめて下さった担当者の方々に、心から感謝します。
自分が関わる仕事において、最大限活用させて頂くことで、恩返ししていきたいと思います。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする